2014年10月11日土曜日


上杉家は越後国といった印象が強いのですが、上杉景勝の時代では25%程度が信濃国の者達で構成され、直江山城守を中心に越後と信濃の者がほぼ均等にバランスを保つ体制であったことに気付きます。上杉家臣の中でも直江は5万3千石と群を抜いていますが、No2は須田の1万2千石、No5で島津6千石と、他の上杉家の古参者を差し置いて重用されていました。「須田、清野、島津、芋川、市川」?と、聞いたこともないような人物が居並んでいますが、須田が須坂市、清野が長野市松代・東条・西条など、島津が長野市赤沼から豊野など、芋川が飯綱町など、市川が栄村から野沢温泉村などと、皆が現在の長野市より北にあたる地域の小土豪でした。彼等がどのような経緯で上杉家臣となったのかは、主に次の3つに分かれます。
①武田晴信の侵攻に対して反抗し、敗れて上杉を頼った者。
②武田と上杉の抗争に巻き込まれ、最終的に上杉へ降った者。
③武田・織田と仕え、織田信長の死後に上杉へ降った者。

彼等が歩んだ3つのルーツをまとめようとすると、それこそ真に直江兼続を中心に書かれた『天地人』の内容を表すことになります。


『上杉家中役方大概』天正5年(1577)
 遡ること16年前の、上杉謙信が越中国に出陣した際に作成された『上杉家中役方大概』天正5年(1577)において信濃諸将を探すと、御一門衆で「山浦源五」、御評定衆9人のうちで「島津玄蕃」、御奏者番4のうち「島津淡路守」、御組大将衆12人のうち「桃井主税助・高梨源太郎」、御番預衆8人のうち「岩井備中・井上将監」、御将足軽大将7人のうち「芋川勝八」、御先足軽大将16人のうち「市川惣四郎・栗田刑部少・清野高平」、御手眼預9人のうち「小田切半左衛門・諏訪部次郎衛門・清野市兵衛」、御長柄奉行6人のうち「大室源四郎・大滝土佐、清野因幡」、御大目付2人のうち「須田相模守」、御横目付6人のうち「岩井源蔵・西条全人」、道奉行2人のうち「栗林さふ助」と、最低21人を見出すことができます。さすがに御宿老や奉行衆は上条山城守や本庄美作守など越後国衆の者達で占められていますが、山浦国清(村上義清の子)が上杉一門の扱いを受ている点など注目され、その外の者達も評定や目付など中堅クラスの実務職に深く関わっていました。これにより、既に天文22年(1553)川中島の戦いから24年が経った謙信の時代から、信濃諸将が何らかの形にせよ、上杉家の家臣として深く利用されていたことが分かります。

 御一門衆として登場してくる村上源五国清については、実のところ詳細が分かっていないのが現状です。しかし通説によると、村上国清は村上義清(元亀4年1573死亡)の子でしたが、上杉謙信の養子の形式により山浦上杉家の名跡を継ぎました。軍役帳でも他の御一門衆を差し置いて上杉景勝の次に列記され、天正7年(1579)には景勝から「景」字を頂戴して山浦景国と名乗りました。景勝は上条入道宜順と山浦景国だけに「殿」を付けて呼んでおり、明らかに他の年寄や家臣達とは別格に扱われていました。このように、謙信時代に主力とまで言えなかった信濃諸将が、上グラフの景勝時代になると、より重要な地位(年寄など)へと上昇しています。それがどのような経緯でなったのか、歴史の中で見てみましょう。

上杉景勝は川中島4郡支配について海津城をその中心と定め、武田以前の村上氏による統治により秩序を保とうとしました。

各支配は下記のとおり。

高井郡 海津城(長野市)山浦(村上)源五景国
高井郡 市川城(野沢温泉村)市川左衛門房綱
更科郡 猿ケ馬場城(千曲市)清野助次郎長範
更科郡 牧之島城(信州新町)芋川越前守正親
更科郡 平林城(千曲市)平林蔵人佑正恒
更科郡 稲荷山城(千曲市)保科佐左衛門
水内郡 長沼城(長野市)島津淡路守忠直
水内郡 飯山城(飯山市)岩井備中守信能

それから13年間は平和が続きましたが、慶長3年(1598)上杉景勝は、豊臣秀吉より越後国・信濃国・越中国の領地に代わって会津若松城への移封を命じられました。新たな領地は加増となって「陸奥国の会津4郡(会津郡、河沼郡、大沼郡、耶麻郡)、岩瀬郡、安積郡、安達郡、信夫郡、白河郡、石川郡、田村郡、刈田郡。出羽国の置賜郡(長井郡ともいう)、庄内3郡(田川郡、櫛引郡、遊佐郡)。佐渡国」の120万1200石となりました。

この移封により、川中島4郡などの信濃諸将も移ることになり、彼等も加増されて各地に配属されました。
この時は、信濃国上杉領を武田勝頼へ譲渡した際に行われた残留は許されず、耕作する者以外は全て会津へ移るように豊臣秀吉の直命が下されました。

陸奥国 岩瀬郡 長沼城  島津忠直    7,000石

島津玄蕃 2333石 置賜郡一本柳・竹森、信夫郡荒戸鳥・和田

[出典]
http://www1.ocn.ne.jp/~oomi/yomono5.html



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