2015年1月14日水曜日

辰白河口戦争記


白河市教諭
佐久間律堂氏が昭和16年に発表した作品「戊辰白河口戦争記」

自序

戊辰の役は、明治維新の新建設に伴って起こった極めて複雑した免れ難い戦乱であったが、武家時代最終の戦だけに、東西両軍何れも武士道精神を発揮して戦った
白河口の戦は頗る激戦であり、且つ長期に亘った戦争であったので、白河地方にはその戦跡も多く、史話や記録も亦多く遺されている。余、大正九年白河に居を移し爾来二十有余年此等戦跡を遍く訪ね、古老に実話を質し、或いは旧家に記録を求めた。適々今秋戊辰戦争を隔てる七十四年に方り、此等地方特殊なる郷土史料を一般史に織り込み「戊辰白河口戦争記」と題して上梓に附することとした
本書収むる所、雑録と見るべきものあり、また爐邊物語に類する所も少なくない。これ当時の実況を語るに足るものは片言隻句(へんげんせっく)と雖も之を収録せるに因る。本書戦争史と言わずして戦争記と称したるもこれがためである。ただ著者の浅学寡聞、よく史実を尽くさず、推敲意に満たざる所多し、後日訂正修補の機あらん。されどこの小著世に裨益するあらば幸である。偏に江湖の批正(ひせい)を仰ぐ
口絵の五月一日戦図は、大山元帥伝の付図なるを、特に大山家の御許を得て本書に転載したるもの、戦図の縮写、白河城大手門の複写及び砲弾等の実写は何れも熊田猛夫氏の労を煩わしたるもの、題筌(だいうけ)は大谷五平士の揮毫(きごう)を岩越次郎氏の彫刻されたものである。ここに付記してその好意を深謝す
 昭和十六年九月
 著者識す



0 件のコメント:

コメントを投稿