2014年12月15日月曜日



長野市穂保の長野市役所長沼支所の東側ある長沼公園に一茶と「長沼十哲」の句碑が4基もありました。長野市市政百周年記念事業として平成13年8月に立てられたものです。
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  公園の入口にある一茶の句と長沼の門人第一号、春甫が描いた「長沼連衆画象寄合書」の碑が目を惹きます。先ず、一茶の句から。
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   首たけの 水にもそよぐ 穂麦かな   一茶(「八番日記」)
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 この句は文政2年(1819、一茶57才)5月に詠まれています。「おらが春」はこの一年の句文集で、正月に「這へ笑へ 二ツになるぞ けさからは」と詠んだ愛娘さとを6月に疱瘡で亡くしています。
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  5月の日記には17日に妻キクの姉が亡くなったこと、下旬には善光寺の門人三好(上原文路)、長沼の門人魚淵を訪ね、六川(小布施)、田中(湯田中)を回ったことが記され、雨の日が多く、特に14日には「(十)四大雨 鳥居川洪水」とあります。
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 鳥居川は戸隠山の麓、つまり戸隠神社の鳥居付近を源流にして信濃町、飯綱町を流れ長野市浅野付近で千曲川に合流する一級河川です。梅雨時の増水で川幅を広げた千曲川を渡って六川の梅松寺や田中の湯本希杖を訪ねた折に目に留まった冠水した麦の穂を詠んだものでしょう。
  麦の首丈とありますから、50センチ程も水に浸かりながらもそよ風にでも当たるような素振りで揺らめいて戦っている、というか平気でやり過ごしている細い麦のたくましさに一茶は感銘を覚えました。
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  こういう風景はどこかで見たぞ、と一茶は思い出したことでしょう。馬橋や流山で利根川(現江戸川)の増水の中、小さな昆虫が濁流にもめげずに頑張っている姿です。
   夕月や 流残りの きりぎりす  一茶(「文化句帖」)


[出典]
http://issablog.kohei-dc.com/?p=21660

 

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