2014年12月18日木曜日


下野国二荒(ふたら)山信仰に基づいた猿丸大夫の伝説がある。林道春(はやしどうしゅん)の「二荒山神伝」によると、「昔、有宇中将(ありうちゅうじょう)という殿上人が勅勘をこうむり、奥州小野郷の朝日長者の客となり、長者の娘を妻とした。その孫が猿麻呂といい、奥州小野に住むによって小野猿麻呂といったという。そして、有宇中将とその妻は死して二荒山の神となり、それぞれ男体権現、女体権現となった。その後、山中にある湖をめぐって赤城の神と争いになり、二荒の神は大蛇の姿で、赤城の神は百足(むかで)の姿で戦ったという。二荒の神は敗色濃く、鹿島の神の言を入れて、弓の名手で力の強い猿麻呂の助けを仰いだ。猿麻呂は大百足を倒し、利根川の岸まで追って行ったがそこで引き返した。血が流れて水が赤くなったので赤沼、山を赤城山、麓の温泉を赤比曾湯と呼び、敵を討った場所であるため宇都宮という名ができた。」というもので、小野猿麻呂は宇都宮大明神と崇められた。猿丸大夫の祖父、有宇中将という名が、どうも在原業平の在五中将を連想させる。「有」は「在」ではないか。業平は惟喬親王を通じて小野小町と関係のある人であると共に、相手が猿につきものの朝日長者の娘、つまり太陽であり、大蛇が化身であることも合わせて興味は尽きない。同じ三十六歌仙の一人というのも、気になるところである。

[出典]
http://homepage2.nifty.com/amanokuni/wani.htm

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